ナタリーという人間は何かと朝が早い。
変な風に育ったせいか、夜は遅く朝は早いという休んでいるのか休んでいないのか分からない生活を送っている。
と言うわけで、今朝も5時半起き。
モーニングミュージックはハイポップチューンで、目覚めも良好。
がちゃりとドアを開け外の空気を吸いに玄関を目指す。
他人の家だけど気にしない。
「今日も雨が降りそうだなあ」
気分と反比例して空模様はねずみ色。
とりあえず、部屋に戻ってレポートを仕上げるか。
だけど、そのとき、
「ああ・・・ナータ・・・おはよう」
「り、凛ちゃん・・・?」
猫のパジャマに身を包み、かわいい"はず"の女の子の魔術師が歩いている。
しかし、その形相はいつぞやテレビで見た心霊写真に酷似していた。
そう、私、ナタリーは、生きる屍(living dead)を見た。

三話

-beautifuls-


なんだかナータさんが私をちらりちらりと見てくる。
しかも、ちょっとだけ疑いの目のような感じだ。
「士郎・・・」
こそりと士郎に話しかける。
桜はぐっすり寝ているようで、6時半を過ぎてもまだ眠っているようだ。
授業がある私たちをは違って桜は部活。
インターハイが近いとはいえ、自由練習であるため起こすのは後にしておいた。
で、私は二日酔いがガンガンと頭を攻撃してくるためこうしてキッチンに熱いお茶でももらいに来た。
「うん、どうした遠坂?」
「あのね、ナータさんが・・・」
「ああ、すごいびっくりしてたぞ」
「え、なんで?」
問いつめようと聞き返すと
「い、いやなんでもない!」
話をはぐらかす。
「と、ともかくほら、苦い茶を入れてやったから飲め」
「う、うん。ありがとう」
渡された湯飲みの中はそこが見えないほど濃い。
でも私にとっていい薬だ。
体にとっても、今後のお酒と付き合いにとっても。
なんか腑に落ちないが、苦くてあついお茶を表情だけでもおいしそうに飲み干した。

ナータさんも朝は早いようだ。
6時頃起きたところ、今でちょこんと座っていた。
しかも第一声が
「・・・凛ちゃんって、ナニ?
だ。
必死で朝が弱いだけ、と話したが今ではほとんど疑いの目で遠坂を見ているようだ。
先ほど、当人に質問されたときは本当に困ったが。
「じゃあ、ナータ先生は職務が終わった後、士郎の家に一度帰ってきてください。お昼を取った後、行動します」
「うん、わかった」
もうすぐ藤ねえも来るだろうか。
一応、場の空気は元に戻ったが、・・・たぶんトラウマになるんだろうな。
あれだけ怖がってたからなあ。

桜は普通だった。
遠坂と違い酒は残らない体質らしい。
「桜あなた大丈夫なの?」
「え、大丈夫ですよ。でも昨日の晩のこと、あんまり覚えてないんです」
てへへ、と照れながら語るのは桜嬢。
結構できていた、と言う事実は遠坂が心配する時点ですごいことになっている。
「聖杯戦争か」
今は登校中。
少しだけ遅く出てきたため周りは急ぐ生徒が多い。
「はあ、また変なものに巻き込まれたものだわ」
「楽観的なんだな、遠坂」
「マスターになるならまだしも、ね。私や士郎に直接害がくるわけじゃないし」
「心配してくれてるのか?」
「どう捉えてもかまわないけど・・・」
と突然、指をこちらに指して、
「あんたは絶対に巻き込まれないこと。前回の戦争で懲りたでしょ?」
と忠告された。
「む、だけど遠坂。人が・・・」
「戦争をおっ始める奴らは魔術師よ。一般市民を巻き込むなんてふざけた芸当しないし、自業自得とでも思ってればいいのよ」
なんか、かんに障るが。
「・・・とにかく、士郎は変なものに首を突っ込んで、それで無事で帰ってくることなんてあんまりないんだから。専守防衛でいて」
その顔は、魔術師の顔ではなく、遠坂凛という人間が心配してくれている顔だった。
「ああ、わかった。ありがとう遠坂」
「な!わ、私は別にあんたなんて・・・!」
手をぶんぶんと振りながらあわてている。
「素直じゃないな、遠坂は」
「・・・それ以上言うと、撃つわよ」
「冗談だって。冗談」
急いで訂正するも満面の笑みを浮かべている。
嗚呼、敵は内にもいたか。
「と、に、か、く、士郎は専守防衛!わかった!?」
「了解。俺も変なものには巻き込まれたくない」
「わかった。じゃ、私先急ぐね」
たったったと駆けていく優等生。
さすがにこれ以上、一緒にいると噂の一つや二つ・・・立ってるか。
さ、午後は忙しくなりそうだ。
前にいるあくまに追いつかない程度に校門を目指しながら不安の風を突破した。

昼を過ぎる。
受験勉強に勤しむ生徒は昼飯を持参しているが、生憎本日は飯を食っている暇はない。
藤ねえは勝手に食べるということなので心配はない。
「じゃあご飯食べてからにしようか」
「わかりました。士郎、作りなさい」
「はいはい、女王様・・・」
聞こえない程度に愚痴を漏らし、エプロンを身につける。
今は家に帰ってこうして作っているのだが、聖杯戦争の調査なんて大事をするのに緊張感はない。
「じゃあ、柳洞寺というお寺を?」
「はい。結界が張ってあるから入れないけど私がいれば入れる」
居間で作戦会議している二人。
茶を啜りながら喋っているので遠くからみれば絵になる光景なんだろうけど、言ってることは物騒だ。
「さすがにこれ以上、私の管理だけでは手に余る」
「協会から派遣するつもりだったんだけど、適任者が見つかったのがつい先週で。本当はすべてその人に任せるつもりだったんだけど急遽私が駆り出されたって話」
「それでも数日中には派遣してくれるわけね。特に新都の教会の人間は今すぐにでもほしいから」
急いで作ったチャーハンができあがる。
簡単でいいや、と思っていたが手は抜けない。
特にチャーハンは美味しさが本当に左右する料理だ。
確かに適当に作っても旨い。
だが本当に旨いチャーハンを作るとなるとそれなりに作り込まなければならない。
米と卵、そして具が一つ一つ調和し、ぱさぱさっとした食感を作り上げて初めてチャーハンなのだ。
そこからまた、良質なチャーハンを作る、ということはさらなる研究が必要となる。
「これなんていう料理なんですか?」
会議を一時中断しているナータさんに問いかけられる。
「チャーハンっていって中国の料理よ。まあ本場の味じゃないけど士郎が作ったからそれなりにおいしいはずよ」
いつの間にか遠坂の口調がため口になっている。
そういえば初めてこの家にきたときも俺の名前を呼び捨ててたな。
・・・だから友達が少ないのか?
「士郎、また変なこと考えたでしょ?」
「え、ま、まさか」
「顔が豆鉄砲食らった鳩のようになってるわよ」
反面俺は感情がすぐ表に出るタイプのようだ。
「魔術師にはあんまり向かないタイプかもねえ」
「ええ、だから師匠の私もこのあんぽんたんに苦労してるんです・・・」
勝ち目がない戦いは笑うしかない。
「あ、あら士郎、へっこんじゃった?だ、大丈夫よ。あなたには料理って誰にも負けないもんがあるじゃない」
もう、遅いです・・・。

method of fall boyfriend in ten minutes



back
contents top


since 04/12/30

(c) BadFuge http://badfuge.fc2web.com/

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送