「二日連続で濡れて帰ることになりそうだな」
「だからシロウ、私あれほど傘をもってったほうがいい、って言ったのに」
たぶん明日から本格的に忙しくなると考えた俺たちは今の内に買い出しに行ってこいと遠坂に言われた。
そのため比較的暇であった俺とイリヤが新都の方へ向かった。
買い物の内容は電球と先週修理に出していた掛け時計、それに電池とガラクタ修理用の銅線など。
商店街でも買えるのだがいまいち食品以外の物価が高いのと家の電灯が少々特殊なので新都のホームセンターまで行かなければ見つからないのだ。
ちなみに何故特殊かというと、これの持ち主が遠坂であったからだ。
1ヶ月前、魔術の訓練中にあまりの俺のへたれっぷりにキレた遠坂がガンドを乱射し、結果遠坂が寝泊まりしている部屋の電気が破壊された。
そのため壊した張本人である遠坂が自宅にあった電灯を持ってきたのだが、どこの国で製造したか、いつ造られたかも分からない代物の電球は珍しいものだった。
一応ホームセンターにあることは分かったのだが買うのは俺なので何か腑に落ちない。

八話

-complete dark and little line of holy-


「もうっ。リンの部屋の電球なんてほっとけばいいのに!」
「そうは言っても、今日の夕飯の当番遠坂だからどうなるか分からないぞ」
「そ、それは困るわね」
ちなみにイリヤにも困らされた。
別に俺一人で新都に行って買い物を済ませればよかったのだが、戦争中ということで単独行動禁止令が出されイリヤがついてきた。
本当はセイバーか遠坂と一緒に来ればいいのだが、遠坂は今日中にナータさんと結界を強化しなければならないし、セイバーはナータさんのサーヴァントだからマスターの元を離れるわけにはいかない。
それでもセイバーはついてこようとしたが、ここでイリヤが駄々をこねた。
まあ、たいした買い物じゃないし、行き先が新都だからよほど暗い路地に入らなければ襲われる心配もない。
それに俺もイリヤもマスターじゃないし。
「でも雨が降るくらいならそのくらいどうだってよかったのよ」
しかし、そのイリヤが俺を困らせた。
イリヤも自分はレディだ、って言い張ってる割に全然まだ子供だから・・・、まあ、色々あるわけだ。
そのためぶーぶーと文句を言っていた。
だから、一通り買い物が終わった後、おいしいと有名なソフトクリームで機嫌を取り戻そうとして新都の公園に入ったわけだが、ここでお天道様が不機嫌になってしまった。
「にわか雨ね」
恐らくあと数十分もすれば収まるだろう。
そうしたらまた降られる前、もといまたイリヤの機嫌を損なわない前に帰らなければ。
「・・・ねえ、シロウ」
「なんだ?」
「セイバーさ、どう思う?」
「どう思うって何が」
「うーん。例えば調子はどうかとか」
「ははは、そんなのはセイバーに聞いてみなきゃな」
まあ、やつだったら一言、
『はい、いつでも戦えます』
だろうな。
「でも、俺の調子は良いぞ」
「むうー、そんなこと聞いてないー」
ぷくうと大福のように膨れあがるイリヤ。
どうやら機嫌は回復したらしい。
「うん。でも、シロウが元気なら私も元気よ」
「それならよかった」
答える為、笑顔を作って応答する。
もちろん本心からなる笑顔でありいわゆる屈託のない笑顔だ。

ざー。

それでもお天道様は容赦しない。
にわか雨かと思っていたが、どうやらここに腰を下ろしたようだ。
なぜだかさっきから雨雲が動かない。
「もうちょっと待ってようね」
「ああ」

その時、無理にでも帰ろうって言っていたのなら、未来は大きく変わっていたかもしれない。

paid to my God



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