土いじりも一段落つき、地面に腰を下ろしていた。
想像以上に固かった地面を掘るのは困難を極めたが、十センチくらいまで達したところで急に土が軟らかくなった。
ちょっと多めに掘ってしまったが十分に育つだろう。
土を戻し、軽く地面を叩く。
湿り気も多いし、雨も適度に降るだろう。
深呼吸をしながら森の空気を肺いっぱいにため込み濃厚な酸素を味わう。
どこかで鳥の声が聞こえる。
前きたときは何の生命も感じなかったけど。
やっぱ春なのだろう。
・・・セイバーか。
ここで初めて体を重ねたことを思い出す。
恥じらいより、懐かしさがこみ上げてきた。
思い出すのはつらいけど、忘れられない。
忘れることなんかできない。
忘れたら罪であり、忘れる方法も知らない。
いっそのこと、忘れればどれだけ楽になるのだろう。
「・・・ばかだ」
その場へ大の字に寝転がる。
時刻は二時くらいだろうか。
気温は温かく、日差しも柔らかい。
このまま瞼を閉じればいつの間にか意識も飛ぶであろう。
「少しだけ・・・」
本能に従ってみた。
ゆっくりと目を閉じ眠りの体制に入る。
そのうち遠坂が起こしてくれるだろう。
こくりこくりと意識が朦朧とし、いつの間にか瞼の裏にはセイバーの姿が・・・。

still pray

-her broken friend-


ゴォオオオオオオ・・・
「な、なんだあ!?」
突然風が強くなる。
同時に物凄い魔力に体が自然と震えを起こす。
辺りは土埃で満たされ、風の向こう側に二人の姿があった。
「イリヤ!遠坂!」
目をこらす。
とにかく埃が目に入らないだけで精一杯だ。
細く目を開け、二人の姿を確認する。
「イリヤ・・・?」
一人、いや二人、その内の一人、小さな姿の影はイリヤであろう。
しかし、いつものイリヤとは違う。
魔力をここまでぶちまけ、肌にくる殺気を立てている。
その目は朱く光り、眼前の対象に宣告をしていた。
コロス。
走り出した。
本気で足を地面に蹴る。
「ダメだ、イリヤ!!」
イリヤの前にいるのは遠坂であろう。
第六感が叫ぶ。
イリヤと遠坂の間は五メートル。
その間に一気に体を挟んだ。

少女の目の前に形成されていくのは魔力の塊。
魔力刻印をフルに起動し、風を唸らせ弾丸を形作る。
狙うは眼前の女、我が相棒を殺した憎き魔術師。
覚悟しなさい
一言だけ告げる。
そして、全力で発射する。
この弾丸が近づく森羅万象は飲み込まれ、弾丸の一部となる。
それだけの魔力の塊、誰が防げるであろうか。
そしてこれが当たった瞬間全てが終わる。
「ダメだ、イリヤ!!」
が、一人の男によりその塊はまるで無かったの如く消えた。
これだけの力を作り上げる魔術師、ならばこれだけの魔力をコントロールするのも流石アインツベルンの魔術師だ。
大気は元に戻り、砂埃は収まり、代わりに少女の一撃をかき消した男と狙った女が視界に映る。
「だ、めだ、イリヤ・・・」
男はひょろひょろと地面に座り込む。
一撃は喰らってないとはいえ、あの魔力の塊に近づいたため、当たらなくとも、衝撃は男を弱らせるのはしょうがないことだった。
「シ・・・ロウ」
「殺しちゃダメだ、・・・もう人を殺しちゃいけないんだ」
ひいひいと言いながら士郎は息を整える。
「仇とか、じゃなくて、殺せば誰かがまた悲しくなるんだ。なら殺しちゃダメだ」
言葉になっているのか本人にもわからないだろう。
しかし、その言葉の一つ一つはイリヤに届いた。
「これがあなたの弱さよ」
士郎の向こう側、遠坂凛はイリヤに告げる。
「正確には、あなたが弱くなったのよ。たかが人一人だけで自分の魔力を中断するほどあなたは甘かったかしら?」
無表情で、しかし眼は真っ直ぐイリヤの方を見ていた。
「まあ、たかが、自分のサーヴァントで殺し合う私も私だけどね。わかった?魔術師といえども、私たちは大切な点で"狂っている"ことを」
イリヤは
「そうね。呆れちゃうわ」
少女に戻るスイッチを押すことができた。

"still pray" out



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