遠坂に腕を捕まれ地面にたたきつけられる。
要はこの衝撃から身を防げばいいのだが、そこまで豪快にやられると正直痛い。
それでも抱き合った形で転がったのは役得か。
・・・俺は馬鹿か。
「おい遠坂!大丈夫か?」
馬乗りの状態で大変嬉し恥ずかしな状況ですが、一応心配しておく。
「・・・他人を心配できるなら大丈夫ね」
遠坂も心配してくれたようだ。
で、衝撃の次に来たのが高濃度の魔力の残り香。
先ほどの衝撃ほどではないが魔術師である以上ちょっとだけダメージがある。
それよりも
「ナータさん!!」
そうだ、どうなった。
無事なのか、怪我はないか、━━生きているか。
顔を上げる。
━━ああ、大丈夫みたいだ。
そして次に飛び込んできたのは

「・・・問おう。貴方が私のマスターか」

ひどく懐かしい声だった。

such as

-who is I should thank?-


「何て言う偶然・・・」
その光景に当たり前の感想しか口に出来なかった。
当たり前だ。
聖杯戦争なんてものに2度ならず3度も呼び出された英霊も過去にいただろうか。
「ええ、お願い」
そして契約は完了した。
こいつはまた、こんなばかげた戦いに身を置くことを承諾したのだ。
「・・・アーチャーのマスター」
彼女は、あのときと変わってない声で敵に話しかける。
その威圧する態度も変わってない。
「・・・不本意なのだが、今回はこの場を去ってもらいたい。私もたった今、召還された身で大変不安定だ」
そして彼女は見えない武器を手にした。
「だが、それでもこの戦いを続行するというならば、・・・喜んで剣を振るわせてもらう」
彼女はお開きにしてくれ、と言った。
「・・・そうね、予定が狂った。私もそうしていただけるとありがたい」
アーチャーのサーヴァントも同意した。
あの武器ならば有利なのに、だ。
それなのに武器をおろすことを認めたのは本当に誤算が生じたからであろう。
そしてアーチャーのサーヴァントは音も立てずに静かに去っていった。



アーチャーが消えたのは分かった。
でも目線はずっと違うやつの顔を追っていた。
ここからでは後ろ姿しか見えない。
今はそれで十分であった。
だって、顔を直視したら、━━狂ってしまう。
あの笑顔を思い出す。
何を考えてるのだろうか。
何て話しかけたらいいんだろうか。
気がついたら雨の中を歩き出し、そいつの背後に立った。
自分より一回り小さい背。
目にも鮮やかな金色の髪。
華奢な首筋をしてるのに、とても不釣り合いの鎧。
今は月の夜ではない、雨が降っている。
晴れた日に会いたかったけど、それでも気分に合っているんじゃないか。
「おかえり」
目を合わさず言った。
当たり前だ、彼女はまだこちらを向いてくれないのだから。
━━そして、こちらを向いた。
変わってないな。
本当に変わってない。
その瞳も、何もかも。
唯一あの月の夜と違ったのは、泣いてることだけ。
降りしきる雨粒かと思ったが目が充血してるから、ほほを落ちる水滴の何粒かは涙なのだ。
「もう一度、・・・もう一度言っていただけませんか」
少女のか細い声だ。
騎士であるが上、少女として剣を持つ存在。
何かを守ることに固執し最後まで剣を振るった、愛しき俺の好きな人。
「ああ、おかえり、━━アルトリア」
だから言ってあげた。
歓迎を込めて、再会を喜んで。
「・・・はい。ただいま還りました、シロウ」
その言葉の意味も考えなかった。
ただ気がつけば、抱いていた。
雨が冷たいとか、ナータさんや遠坂は大丈夫だろうかとか、鎧ごと抱きしめると痛いな、とか思いながら。
このままでいたら、間違いなく風邪を引く。
もうすぐ夏だけど、十分体に毒だ。
でも体は、激しく求めた。
「ああ、おかえり、アルトリア」
だから、この口はうわごとのように繰り返すようにしか機能しない。

"such as" out



back
contents top


since 04/12/30

(c) BadFuge http://badfuge.fc2web.com/

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送